お灸と免疫の話

以前、医療関係者や健康知識に優れた方から「お灸で免疫アップといいますが、妊婦でお灸をしたら免疫アップして赤ちゃんを異物と認識してしまわないですか?」とか「膠原病関係の疾患がありますが、お灸は良くないのではないでしょうか?」との質問を受けることがありました。
また、このご時世、「◯○で免疫力アップ!」という言葉が以前にも増して目につくようになってきました。
この「免疫」とお灸についてお話ししてみます。
免疫とは?
「免疫力」という言葉はなかなか難しいです。ここでは「免疫」について少し説明します。
免疫とは人体(自己)にとっての異物を、「非自己」と判定して排除するためのシステムです。
免疫(=「疫病を免れる」)は、一度はしか(疫病)にかかると二度とはしかにかからなくなるというような、身体を守る仕組みです。
正常な反応
- 外から入ってくる病原体や異物を排除、ワクチン接種に対して免疫を獲得したり、拒絶反応を起こす。
- 自己の中に由来する異常細胞(腫瘍細胞など)の排除、老廃組織の除去
異常な反応
免疫弱すぎ
- 易感染性(免疫低下、免疫不全により感染防御が低下)
- 悪性腫瘍(抗腫瘍免疫低下や破綻により悪性腫瘍が発生しやすくなる)
免疫強すぎ
- アレルギー(免疫反応が過剰)
- 自己免疫疾患(正常な細胞を異物として認識して、自己組織の障害が起こる)
「病気がみえる vol.6 免疫・抗弁病・感染症」より
よく言う「免疫(力)アップ」することは、すべての人によい事ではないということがわかります。
お灸の免疫への影響
免疫が弱い人への影響
この人たちには「免疫がアップ」されることが適しています。
お灸の免疫増進については、Wikipedia には以下のように説明されています。
自律神経などに作用して、内分泌に影響を与えることが確認されており、局所の火傷から出る加熱蛋白体(ヒストトキシン)は、血中に吸収され、各種幼弱白血球が増加して免疫機能が亢進することが認められている。
お灸 ー Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%B8
免疫強すぎる人への影響
先日、YouTubeで”お灸博士” 昭和大学医学部 生理学講座生体制御学部門 医学博士 三村直巳先生の「お灸で免疫力は高められるか?」という講義を聞きました。
その中で、自己免疫性の関節炎を発症させたマウスにお灸をして、その後の関節炎の発生率を調査した試験の説明がありました。
関節炎の発症率が低下が認められ、関節炎の腫れは改善、免疫抑制性に働く制御性T細胞が増加していたという結果がでたとのこと。
発症する直前から施灸を毎日開始することで発症率を有意に低下させることができたという報告でした。
これらにより、お灸が関節炎の抑制に関与していることが考えられる、とのことでした。
合わせて考えると
身体がお灸の熱刺激は一方的にどちらかに対する効果があるというより、身体の内部が一定の状態に保たれるという性質(ホメオスタシス)が活性化されるように見えます。
「お灸で免疫力アップ」よりは、「お灸は免疫系の調節力アップ」の方が適していると思われます。
経験的治療の側面からいうと
が、私がやっている鍼灸は、先人の積み重ねの上に成り立っている経験的治療です。
免疫力アップに目を向けるより、体調を整えるお手伝い・妊娠中の身体の変化の中での不調に対して、その方その方へに合った対応をさせていただきます。
免疫力アップしたい、ということは、健康に過ごしたい、という希望があってのことと思います。
妊婦さんなら安産のお灸というのが昔からあり、うまくお灸をしてあげれば、赤ちゃんとお母さんの健康によいです。
また、自己免疫疾患をお持ちの方に対しては、その方のその時の状態に合わせて(炎症があるか・ないか、進行度合いなど)、場合によっては鍉鍼(刺さない鍼)などで対応させていただいています。
セルフケアに、自宅灸を取り入れてみてはいかが?
免疫という側面以上に、1日の中でお灸でほっと一息つく時間は豊かな3分間になると思います。
このご時世、健康増進のために自分でできることの一つとして、お灸を取り入れてみてはいかがでしょう。
(※ 持病がある方は、鍼灸師にご相談されてから行ってください。)
また、お灸をする場所により、消化を良くしたり、痛みを緩和したり、良い睡眠が望めるツボがあります。
食べて、眠って、運動する。これが健康増進のカギです。
それらをうまくやるお手伝いに、鍼灸をぜひご利用ください。
お灸の仕方は?ツボはどこ?
ご希望の方には施術後に、ツボに点をつけさせていただいています。お気軽にお声がけください。
お灸の仕方、ツボはこちらのページをご参考にどうぞ。
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